このコーナーではボートレースを様々な分野で支えているプロフェッショナルにご登場いただき、その仕事の内容や役割についてご紹介します。
ヤマト発動機のボートレース機器製造
(製造部第二課係長:左)と加藤英昭さん(営業部営業課:右)
群馬県太田市にあるヤマト発動機株式会社は、ボートレース用のボート、モーターなどを製造している日本で唯一のメーカーです。公正なレースの実現には、ボート、モーターを規格通りに製造する必要があり、そのためにさまざまな取り組みがなされています。
ボートは全て納品される前にボートレース場による厳格な検査を受ける。何重もの社内チェックを行っているとはいえ、緊張感が走る
※艤装(ぎそう)とは、船体が完成した後、就航に必要な様々な装備を船に施すこと
木材を組み合わせて造られるボートレース用の
ボート
「あまり知られていないことですが、全国のボートレースで使われているボートは、実はすべて木造なのです」。そう話すのは、ヤマト発動機(株)製造部第二課係長でボートの製造に関わっている橋本光夫さん。太田市にある同社の工場では、YM-730と呼ばれるボートをはじめ、モーター、プロペラなど、ボートレース用の製品を多岐にわたって製造しています。
ボートが木で造られている理由はいくつかあります。営業部の加藤英昭さんによれば、「ボートの素材には、衝撃に耐える十分な強度と、水面でのスピーディーな動きを実現する軽さが求められます。木材はこれらの条件を満たしているほか、造りやすさという点でも優れた材料なのです」とのこと。日本全国には現在24のボートレース場がありますが、レース場では、ボートの安全性を保ち、経年による個体差が生じないように、所有している60 隻ほどのボートを毎年すべて新品に入れ替えます。それらのボート製造を一手に引き受けているヤマト発動機では、年間1,500 隻にも上るボートを製造しています。
機械より正確な匠の感覚で 季節や天候に応じた加減を行う
公正さが第一に求められるボートレースでは、すべてのボートが同じ性能を発揮するように、サイズや重さなどが厳格に定められています。たとえば、約200 種類のパーツを組み合わせて造られるボートは最終的に68~69kg 台の重量になりますが、許される重さの誤差はわずか数百グラム。全長や全幅など外形寸法にいたってはわずか数ミリです。全国のレース場に納品する全てのボートを、この規格内で造る必要があります。この数ミリ、数グラムという、極小の世界での精密な微調整を実現しているのは、ハイテク機械だけではなく、熟練された匠の技によるものなのです。
ヤマト発動機のボート造りでは、ほとんどの工程で人の手が入っています。各パーツの製造段階では大型機械やデジタル機器を使用していますが、最終的には人間の感覚で調整しなければ、規格をクリアするボートには仕上がらないといいます。「カンナを使う時は0.1mm 単位で船体を削りますし、塗装工程でも細かく研磨しながら調整します。季節や時間帯、天候などによって素材は変化しますし、それに応じた加減をしなければなりません。これらは非常に繊細な作業で、長年の経験と感覚がものをいいます」と橋本さんは真剣に語ります。
一方で、各レース場からはカラーリングのデザインや、補強パーツの取り付け位置、ビス止めの場所などには、細かな注文があります。ヤマト発動機では、それらの要望にもすべて個別に対応しています。「カラー以外は一見すべて同じボートに見えるかもしれませんが、私たちが見れば、どこのボートレース場のものかすぐにわかります」(加藤さん)。
ベテランから若手へ 匠の技を伝承する重要性
ヤマト発動機では、若手もベテランも同じ作業を行います。“全員がレギュラー”というチーム体制のため、品質を一定に保つためには社員同士で技術をしっかりと伝達することが不可欠です。「基本となるマニュアル類はもちろん整備されています。しかし、身体に負担をかけない姿勢や、どんな動きにも対応できる足の置き方、道具を使う際の力加減などは、とても文章では伝えられません。ベテランにとって、若手を一人前に育てる“人づくり”は特に大切なことなのです」と橋本さん。
現在ボート製造には41 名が関わっていますが、トラブル予防のために、いつ誰がどのパーツを担当したかわかるトレーサビリティシステムを導入。工程ごとの検査だけでなく、社内での最終検査、そしてボートレース場による品質確認検査など、念には念を入れたチェック体制を経てようやくボートは納品されます。加藤さんは「これほど厳しい体制を敷いているのも、すべては安全で公正なレースのため。ひとつとして欠かすことはできません」と胸を張ります。
ボート製造歴40 年以上という大ベテランも在籍するなど、ヤマト発動機には「ものづくり」を心から愛し、ボートレース機器製造を極めた匠たちが日々活動しています。橋本さんは、「ファンの皆様には、ぜひボートレース場に足を運んで、私たちが魂を込めて造ったボートを生で見てもらえたら嬉しいですね」と目を輝かせて話していました。
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ヤマト発動機株式会社 [会社プロフィール]
ボートレース用のボート、モーター等を生産している、全国で唯一の企業。
ほかにも、プロペラ、ユニフォーム、消波装置など、ボートレースに関わる様々な専門機器や用具を製造・販売している。
1957年の創業以来その品質は高く評価され続けており、現在もボートレース業界の発展のため日々研究開発を進めている。
●住所:群馬県太田市六千石町214 |
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プロペラは一つひとつ人の手で研磨される(写真左)。
重さやバランスなどを慎重に確認しながらの作業が続く(写真上)
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厳しい検査を経て、全国のボートレース場に送られるモーター
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